MIA surgery ― Minimally Invasive Aesthetic Surgery(低侵襲美容外科手術)という新しい概念
- 俊行 雑賀
- 4 日前
- 読了時間: 3分
更新日:22 時間前
-はじめに

MIA surgery(Minimally Invasive Aesthetic Surgery / 低侵襲美容外科手術) は、傷を小さく、効果は大きく――そのバランスを追求するために生まれた新しい外科的概念です。
皆さまは「切らない美容医療」という言葉をよく耳にすると思います。
確かに「切らずに受けられる」「自然な変化で済む」というのは魅力的ですが、その一方で「ほとんど変化が分からない」「エステとの違いが見えない」と感じる治療が増えているのも事実です。 (私自身、エステは大好きです。癒しの体験としては、あれを超えるものはないと感じています)
-心臓外科での経験から生まれた発想
私は美容外科に進む前、心臓血管外科医として働いていました。
当時の上司は MICS(Minimally Invasive Cardiac Surgery)=低侵襲心臓手術 の専門家で、私は年間200件ほど助手として手術に携わっていました。
心臓外科の世界では、従来「胸の真ん中を20〜30cm大きく切り開く正中切開」が主流でした。ところが、技術やデバイスの進化によって、肋骨の間からわずか5cm前後の小さな傷口で内視鏡を挿入して行うMICS、さらにはロボット支援手術やカテーテル治療が発展し、患者様の負担は劇的に減少しました。
「最小限の侵襲で、最大限の効果を得る」――この考え方こそが、美容外科の領域にも必要だと強く感じたのです。
-MIA surgeryとは?
MIA surgeryは「切らない治療」を指すわけではありません。あくまで美容“外科”治療として、確実な変化を出すことを大切にします。
切る場合は最小限に
手を加えるなら後戻りの少ない方法で
メンテナンスが最小限で済む効果を
自然に仕上げることは大切ですが、それは「変化がほとんど分からないこと」と同義ではありません。自然さは、バランスやデザイン、生まれ持った骨格を理解することで初めて成立するのです。
心臓外科で重症例に正中切開が必要であるように、美容外科でもフェイスリフトやタミータックなど大きな切開を伴う手技は今後も必要です。その線引きを適切に判断できるのが、本当の“外科医”だと考えています。
-デバイス進化とMIA surgeryの未来
MIA surgeryの中心には「安全で効果的に設計されたデバイス」があります。近年は多くの企業が新しい機器を開発していますが、特に注目しているのが以下です。
Inmode社のエンブレイス治療(切らないたるみ治療を進化させた、低侵襲デバイス)
Establishment社のPreserve(低侵襲シリコン豊胸)(従来のシリコン豊胸を進化させた新しいアプローチ)
これらのデバイスを正しく活用するには、外科的なトレーニングと解剖の理解が不可欠です。
「デバイスがあるから誰でも簡単にできる」
のではなく、医学的な背景を理解した上で適切に活かすことが、MIA surgeryの本質です。
-最後に
MIAsurgeryは「できるだけ傷を小さく」「できるだけ後戻りの少ない」「確実な変化を出す」ための新しい指標です。
単に“切らない”ことを目的にするのではなく、安全性と効果のバランスを追求し、患者様の将来を見据えた選択肢を提供することが目的です。
そして、この考え方を実現するためには、外科的トレーニングに基づいた技術力と、適切なデバイスを見極める知識が欠かせません。
どこまでをMIA surgeryで行い、どこからを従来の外科手術で対応するかを判断できる力――それこそが、これからの美容外科医に求められるものだと考えています。
次回は、具体的な治療内容について詳しくお伝えしていきます。
BIANCA CLINIC 銀座院院長 雜賀俊行
美容外科専門医(JSAS)
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